結城昌治ふたたび

 1週間ほど前の買取りのなかに結城昌治の『死者たちの夜』(角川文庫)が入ってました。結城さんは一時かなりハマった作家で、自分ではほとんど読んだつもりでいたのですが、どうもこれは読んでなさそう。ということで、店に出すのを保留にして家に帰ってパラパラやりだすと、あっという間に終っちゃいました。紺野という名の貧乏な弁護士が探偵役の短編連作。声を大にして「傑作だあ!」というような作品ではありませんが、すいすい読ませてなおかつ余韻と味わいがあり、よい時間を過ごしたなあと思わされる、まさに結城昌治印の1冊でした。

 調べてみると続編があるとのこと。まさかとは思うけれど持っている可能性もあるなと、久しぶりに自宅の本棚をひっくり返して結城さんの本を集めてみました。何冊かダブっているものがあり、それらを抜いてちょうど50冊(1冊のみ新書で、あとはすべて文庫)。最大勢力である角川文庫は20冊もありましたが(どれも永田力の表紙が素晴らしい!)、ちょうど『死者たちの夜』と続編である『犯罪者の夜』だけが抜けていました。

 さて、こうなってくるとすぐにでも続きが読みたくなるもの。そして、ぼくの場合、こういう時の常套手段は図書館です。より正確には「東京都の図書館横断検索」というサイト(http://metro.tokyo.opac.jp/)。ここの「ブロック2」というところをクリックして、本のタイトルを入力すれば、文京区、台東区荒川区、北区の図書館での在庫状況がすぐにわかります。そして、もし文京区にあって貸し出し中でなければ、次の日には最寄りの本郷図書館に届くというわけです(台東区荒川区は遅くなるときがあり、北区はやや遅い)。また、たとえ文京区になくてもこの4区であれば、もっとも遠い日暮里図書館でも自転車で10分足らず。すぐに取りに行けるという寸法。

 今回はやや難関で、文京区の水道端図書館に1冊だけ、角川文庫版ではなく、青樹社から出たハードカバーがありました。でも深夜にリクエストの手続きをして、翌日の昼過ぎには届くというのは、やっぱり驚異ですね。もちろん早いのはうれしいのだけれど、こういうのに慣らされていくのは正直ちょっと怖い気もします。さて、そうして届いた『犯罪者の夜』。早速本郷図書館に受取りに行くと太い輪ゴムでグルグル巻になっていました。開架の棚ではなく倉庫に保管されていたこともあって、おそらく相当長い期間借りられていなかったのでしょう。人知れず、本体が背表紙から取れてしまっていたそうです。届いてすぐ糊付したものの、接着にはもう少しかかる模様。カウンターの女性がちょっと困った顔で「すぐに読まれますか?」とおっしゃったのが印象的でした。情報と輸送のスピードがどんなに早くなっても、糊が乾く時間は縮められないというのが痛快で、本当は一刻も早く読みたいにもかかわらず、なんだか浮き浮きしてしまいました。

 そんなわけで『犯罪者の夜』はまだ読了していませんが、この機会に未読の結城昌治を読もうと、あれこれ手配を始めています。調べてみると、まだ軽く10冊以上はありそう。なかでももっとも楽しみにしているのは『死んだ夜明けに』。『暗い落日』『公園には誰もいない』『炎の終り』の主人公である、私立探偵・真木が登場する短篇が3作収録されているものなのですが、迂闊ながらこの本のことはまったく知りませんでした。背表紙が黒い頃の講談社文庫に入っているそうなのですが、見たことないなあ。

 本日の品出しにはアップしませんでしたが、そんなこんなで出てきた手持ちのダブり本に、何となく店で寝かせておいたものを合わせ、結城さんの文庫本を15冊、文庫新入荷棚に出しました。特に珍しいものはありませんが、代表作と言ってよい作品も含まれていますので、よかったら手に取ってみてください。値段は315円から840円。おすすめをとりあえず3冊あげるなら『ひげのある男たち』『白昼堂々』『暗い落日』といったところです(『暗い落日』は角川文庫版。改訂された講談社文庫版に付いている原りょうの解説も読み応えがあるのですが、それについては原さんの『ミステリオーソ』でも読めます。音楽棚のジャズ・コーナーに並んでいるので、よかったら立ち読みしてみてください)。

 最後に。今回、結城昌治の著作について調べるにあたって、下記のサイトにとてもお世話になりました。ありがとうございました。

 横丁の探偵「結城昌治の部屋」 http://homepage1.nifty.com/kobayasi/author/yuki.htm
 
(宮地)