円頓寺劇場

koshohoro2006-11-13

 まず報告から。先週の木曜日、「古本すなめり」さんが3回目の補充に来てくださりました。翌日の金曜に早速4冊売れ、その後も少しずつ売れています。アップした写真は、先ほど撮った今日現在のラインナップ。おすすめはチラリと見えている『中川敬語録』かな。次回の入替は17日(金)の夜を予定してます。お楽しみに(早い者勝ちですよ)。

 さて、ここから本題。

 今日品出しした現代教養文庫の『日本シネマ紀行』に、加藤泰の『緋牡丹博徒花札勝負』が取り上げられていました。6月に池袋の新文芸坐で観たばかりなので「どれどれ」と読んでみると、『花札勝負』の舞台はなんと円頓寺だったのですね。名古屋が舞台ということは説明されているし、堀川だというのも想像はしてたけど、にもかかわらず、そこが円頓寺だとは考えもしませんでした。もっともそんなこと、名古屋に縁のない人にとってはもちろん、名古屋生まれの人間でもぼくらの世代ぐらいになると当たり前でしょうけど、でもぼくはこの場所にあった映画館に多少なりとも思い入れがあるわけですから、驚くと同時に、思いが至らなかったことがちょっと残念でした。

 円頓寺名古屋城のお堀の南西側にある盛り場で、明治の半ばから昭和初期にかけて非常に栄えた場所だったそうなのですが、ぼくが通った高校生の頃には完全にさびれていました。商店街の閑散とした様はアーケードが立派なぶん余計に目立ちましたが、でもその沈滞した佇まいは、場末のピンク映画館に集まる大人たちの風情と妙にしっくりときていて、ぼくは好きでした。

『日本シネマ紀行』によると、加藤泰は少年の頃、この町にいくつもあった活動小屋に十銭硬貨を握って通ったそうです。この映画を撮影した1969年には、すでに加藤少年の知る名古屋は姿を消していたでしょうが、現地ロケに加え、監督の思い出を再現したのであろう町並みのセットからは、往時の活気が十分に伺えました。映画自体は藤純子というよりは健さんの映画でしたが、もちろん傑作ですし、またどこかでかかったらぜひ観てみたいものです。

 気になったので調べてみると、円頓寺劇場、去年までは営業していたそうです。その解体途中の写真が載っているサイトを見つけましたので、リンクを貼っておきます。いずれにしてももう行くことはなかったに違いありませんが、これを見るとやっぱりしんみりしてしまいますね。

 「名古屋発 レトロを訪ねて2」http://retrovisit.blog20.fc2.com/blog-entry-102.html

 名古屋らしいだだっ広い大通りを路地に入り、昔ながらの町並みを抜けていった先のがらんとした一角に映画館はありました。そのたどり着くまでの道すがらの景色、建物の感じとか町の空気は、今でもぼんやりと思い出せます。あと、歩いているときの自分の心持ちのようなものも。残念ながら観た映画のほとんどはあらかた忘れてしまいましたが、ただ1本、鈴木則文の『聖獣学園』だけはとても印象に残っています。あの多岐川裕美は強烈でした。

(宮地)

緋牡丹博徒 花札勝負 [DVD]

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聖獣学園 [DVD]

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