ハードスタッフ・ナイト

 楽しかったハードスタッフ・ナイトからちょうど1週間。店の中にはあの日の余韻がいまだに漂っています。好きになったものをずっと好きでいることは案外難しいことなのですが、そうあり続けることの大切さと喜びをあらためて教えてもらった夜でした。
 本編での小西さんの話はもちろんのこと、打上げの席での美川俊治さんがまた強烈で、自分のバンド(インキャパシタンツ)についての「ともかく続けていくこと。経済的な基盤を別にきちんとつくり、かつ練習しない(=無理はしない)こと。そうしていれば必ず良いことがある」という台詞は印象的でした。大手銀行員のかたわらノイズ・ミュージシャンとして毎年海外公演までする美川さんや、やはり公務員として働きながら「ハードスタッフ」を続けてきた小西さんのような行き方は、自分にはそもそもできなかったに違いないのですが、まあそれはそれとして、趣味と仕事をごっちゃにすることを選んだ以上、自分はその線で、そこだからこそできることをやっていかなきゃ、と思いも新たに心昂る毎日です。だから、というわけでもないのですが、今日はぼくがずっとずっと愛してやまない作品を紹介させていただくことにします。

声に出して読んでみた盗作 

 続いて昨日の<盗作>トークですが、こちらも楽しかったですよ。ご来場のみなさまに感謝。だいたいの流れは南陀楼さんが早々とアップしてくださっているので、ここではとりあえず思ったことを。

  • クールで年齢不詳な栗原裕一郎さんにはシビれました。こういう佇まいの人がああいう地道な労作をものにするのかあ、と。立居振舞いなども含め、不忍ブックストリート界隈にはいないタイプ。
  • 佐藤わこさんの朗読は期待通り。終演後、畠中理恵子さんに「盗作かどうかなんてどうでもよくなるくらい、聴いてて気持ちよかった」と言っていただき、まさにわが意を得たり。『赤頭巾ちゃん気をつけて』も聴けたし、ほんとお願いしてよかったです。
  • ただ、<盗作>比較に朗読はあまり向いてないよう。『東海道戦争』と『夜の果てへの旅』の組み合わせはバッチリだけど、大藪春彦ロス・マクドナルドの場合はまったくダメというように、対象を選びました。そもそもシャレなんだからまあいいのだけど。
  • ゲストの安藤礼二さん。ずっとニコニコしてらっしゃるのに、話し出すと迫力満点。おまけに用意されネタのおもしろさといったらありません。とくに澁澤龍彦についてのくだり。読者からの<盗作>疑惑の手紙に自ら返信する澁澤の語り口に、会場一同大受けでした。
  • 自分好みの外国作品を元ネタに創作をする澁澤龍彦と、いわゆる「渋谷系」は似ているという指摘には目から鱗。実際「渋谷系」全盛期には澁澤の本もよく売れたという事実があるそうです。確かに音楽の世界に比べたら文学の<盗作>なんて小さいものだけど。
  • 打上げの席では『赤頭巾ちゃん〜』にまつわる小ネタも。栗原さんによると、「薫くん」と内田樹「同級生」であるだけではなく、『赤頭巾ちゃん〜』発表当時、日比谷高校内では「あれは内田が書いたに違いない」という噂が駆け巡ったそうです。なるほど、内田樹は当時からそういう存在だったのか。
  • 庄司薫が影響を受けたに違いない(とされている)『ライ麦畑でつかまえて』の野崎孝訳。でも、どうやらそれにも元ネタがあるらしい、という話で、栗原さんがある本が紹介されたのですが、それについては次の項で。

(宮地)

雨の水の底楽団

 昨日おとといの二夜連続イベントは、おかげさまで無事終了いたしました。まずは、おとといの水の底楽団のことから。

 開演の2時間ほど前から凄まじい豪雨となり、これじゃいくらなんでもお客さん来られないんじゃ、と心配していたのですが、なんのなんの。最終的には40人近くの方が来場。十四郎さんは「今日来てくれた人たちは、本当のファンだ」と仰り、うちの山崎は「これが水の底力だ」と言ってましたが、本当にありがたいことです。また、こんな寒いんじゃ生ビールどころじゃ、というのもあっさり杞憂に終わり、軽く2樽(20ℓ)が空になりました。結局、気候の影響が出たのは、機材の搬入が押しに押して、開演時間がちょっと遅れたことぐらいでしたね。

 で、肝心の演奏の方ですが、これも期待に違わぬ素晴らしさ。廣政さんのギターが入ったことで、十四郎さんがほぼ唄に専念できたのが、まず大きくって。で、そのソウルフルなヴォーカルを尾形さんのうねるベースが支え、さらに廣政さんによるユニークなオブリガートがからみつくと、そこに独特の世界が生まれる、というわけです。今回聴いていて感じたのは、尾形、廣政両氏の、十四郎さんの曲に対する共感のようなもので、それが演奏をあったかいものにしてるんじゃないかと思いました。

 ほとんどの曲は、これまで何度もほうろうで演奏されてきたお馴染みのものばかり。それらが、そのときどきで微妙に、そして大胆に姿を変えるのも楽しみですが、それと同時に、これらの曲は、ぼくたちにとって、そしていつも来てくださるこの町の人たちにとって、ほかに換えの利かない大事な大事なものなんだよな、ということを最近よく考えます。たとえ「タイトル忘れちゃったけど、あの終電なくなって上野から歩いて帰ってくる歌」みたいな覚え方しかできなくても、ここで聴いた十四郎さんの唄は、いつまでも忘れないでしょう。

 終演後は、店で軽く乾杯した後、近所の焼き肉屋へ。一度話をしてみたかった廣政さんとたくさんお喋りできたのがうれしかったです。

(宮地)

水族館劇場、古書ほうろうに現る!

 ご報告が遅くなりましたが、ほうろう初の芝居上演、盛況のうち無事終了いたしました。雨のなかご来場いただいたお客さま、お忙しいなか時間を割いてくださった内澤旬子さん、そして、この一日のためだけに準備と稽古を重ね、ぼくたちの店を異空間に変えてくださった水族館劇場のみなさま、本当にどうもありがとうございました。


 水族館劇場の神髄は、大観音の、あのテントのなかでこそ触れることのできるものですが、馴染みの役者さん一人一人の存在感は、舞台をほうろうの店内に移しても、変わらず際立っていました。桃山さんの演出も、店の構造を最大限利用してくださったもので、舞台の袖がちゃんと左右にあるところや、店の入口(=客席の背後)とバックヤード(=楽屋)がマンションの裏側を通じてつながっているところなどが、うまく使われていました。おそらく古本屋としてはあまり例を見ない、ほうろうならではのそんな特徴が、いつもの見事な舞台美術の代わりに、ちょっとだけでもなったような気がして、これはとてもうれしかったです。音楽も印象的。本公演の際は必ずオリジナルの楽曲が付くところ、今回はありものが使われたのですが、おかげで「大団円のテーマをO.V.ライト*1が唄う『鞍馬天狗』」という、想像もできないものに遭遇しました。あそこであれがかかった瞬間は、痺れたなあ。

 後半の内澤さんとのトークでは、ふだんあまり聞くことのない桃山さんの考えを知ることができました。今日のところは、話が転がっていくにつれ内澤さんが桃山さんの話を引き出す、という展開になったためですが、結果として、「水族館劇場は、なぜ、発声練習も肉体訓練もしないのか」など、興味深い話がたくさん聞けました。

 すべてが終わるまでは緊張のし通しだったのですが(なぜぼくが?)、打ち上げ突入後、残ってくださったみなさんの満足そうな顔を見るにつけ、ようやくホッとし、その後は、明け方までひたすら飲みました。いつもほうろうを利用してくださっている常連のお客さんや、久しぶりにお会いしたお知り合い、それに、これまであまりきちんとお話したことのなかった水族館劇場の杉浦さんや杉澤さんなど、多くの方とたくさんお話することができ、ほんとに楽しい夜となりました。ミカコ手製の「レンズ豆のトマト煮」が好評だったのもうれしかった。それにしても、飲んでも飲んでもどこかからお酒が出てくる宴でした。差し入れをしてくだったみなさまに感謝。


 自分の生活する町に、毎年テント芝居が、それも水族館劇場がやってくるということがどんなに恵まれたことか。そしてそれは何となく続いていくものではなく、劇団のみなさんや大観音ご一家の絶え間ない努力あってこそであること。そしてぼくたちにできるのは、この劇団の魅力を、この町やその周りの、まだそれを知らない人々に少しずつでも伝えていくこと。じつは今日、お芝居がはじまる前の挨拶で、このようなことを話せたら、と思っていました。生まれて初めて受けたスポットライトの衝撃で、全部吹っ飛んでしまったのですが。



 今年もゴールデン・ウィークが明ける頃から、団子坂上の大観音境内に、あの風変わりなテントが、少しずつ姿を現します。5月23日(金)に初日を迎え、6月9日(月)の楽日までの3週間あまり、またいつものようにぼくたちを、ここではないどこかへと連れて行ってくれるために。
 演目は『Noir 永遠の夜の彼方に』。毎年来ている方も、いまはじめて知った方も、万障お繰り合わせのうえ、お出でください。前売券は、近日中に古書ほうろうでも発売を始めます(今回の公演は、全日、期日指定となります。ご注意ください)。

(宮地)

*1:『メンフィス・アンリミテッド』からの「アイム・ゴーング・ホーム」

Big Wednesday Revue 12/19

ほうろう今年最後のライブ終了。
締めてくださったのは、夏以来の"近藤十四郎meets尾形慶次郎"。

先ず、始めにお詫びから。
開演時間が遅くなり、時間通りにご来場くださったお客さまを大変お待たせしてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。今後はこのようなことがないよう気をつけます。



この日の、私の好きな終電の上野駅からギターケース引きずり石ころ蹴飛ばしながら帰ってくる歌は。
この歌に、こんなベースがありなんだーと、驚かされる。

来年もまたやります、きっと。近藤十四郎meets尾形慶次郎は、回を重ねるのが楽しみになってきました!
(ミカコ)



撮影:白石ちえこ

冬の夜長の酒飲みトーク

koshohoro2007-12-13


『酒とつまみ』10号、『モツ煮狂い』第2集、店内に無事積まれ、トーク開始です!


無人のゴザを前に開場前からステージで飲み始める『酒つま』の大竹聡さん、『モツ煮』のクドウヒロミさん、南陀楼綾繁さんの御三方。
舌が滑らかになった頃ちょうど満場となり、南陀楼綾繁さんの進行でトークがはじまりました。
なぜ遅刊するのか、『酒つま』のテレビ出演、『モツ煮狂い』のパクりとその和解まで、最近酔っぱらってしでかしちゃったことなどなど、場内大拍手、大爆笑、沸く沸く。

休憩中は、クドウモツ煮販売。
味噌仕立てのお手製と、信州伊那からのお取寄せ馬のモツ煮「おたぐり」それぞれ1杯200円。
古本屋の中に、行列が出来る。しかもレジじゃないところに。どちらも売切れごめんで、並ぶ人もハラハラ、ドキドキ。どちらも美味しそうでした。(私たちは匂いだけ腹いっぱい吸込みました)
後半はお客さんの質問コーナーでさらに沸き上がり、お客さんもほどよく出来上がったところでお開き。


ご来場いただいたみなさま、『酒つま』の大竹さん、『モツ煮』のクドウさん、企画、進行の南陀楼さん、どうもありがとうございました。

クドウさんはモツ煮の他にも、大阪羽曳野から仕入れた馬の燻製「サイボシ」、お手製元祖ハイ(ガラス瓶入炭酸まで)差し入れてくださいました。『モツ煮狂い』の納品だけでもすんごい重量なのにほんとにありがとうございました。


今回は『酒つま』イベントということで、意気込みの証しとしてホッピーセット付きにしました。

ホッピーは酔っぱらいますな〜。

トーク終了後、刷立てほやほやの『酒とつまみ』『モツ煮狂い』を手に手にレジに向かってくるお客さんたちの紅を差したような幸せ顔といったら、ほうろうイベント史上他に類を見ない景色でした。
いやぁ、素晴らい夜でした。


(ミカコ)