水族館劇場、古書ほうろうに現る!

 ご報告が遅くなりましたが、ほうろう初の芝居上演、盛況のうち無事終了いたしました。雨のなかご来場いただいたお客さま、お忙しいなか時間を割いてくださった内澤旬子さん、そして、この一日のためだけに準備と稽古を重ね、ぼくたちの店を異空間に変えてくださった水族館劇場のみなさま、本当にどうもありがとうございました。


 水族館劇場の神髄は、大観音の、あのテントのなかでこそ触れることのできるものですが、馴染みの役者さん一人一人の存在感は、舞台をほうろうの店内に移しても、変わらず際立っていました。桃山さんの演出も、店の構造を最大限利用してくださったもので、舞台の袖がちゃんと左右にあるところや、店の入口(=客席の背後)とバックヤード(=楽屋)がマンションの裏側を通じてつながっているところなどが、うまく使われていました。おそらく古本屋としてはあまり例を見ない、ほうろうならではのそんな特徴が、いつもの見事な舞台美術の代わりに、ちょっとだけでもなったような気がして、これはとてもうれしかったです。音楽も印象的。本公演の際は必ずオリジナルの楽曲が付くところ、今回はありものが使われたのですが、おかげで「大団円のテーマをO.V.ライト*1が唄う『鞍馬天狗』」という、想像もできないものに遭遇しました。あそこであれがかかった瞬間は、痺れたなあ。

 後半の内澤さんとのトークでは、ふだんあまり聞くことのない桃山さんの考えを知ることができました。今日のところは、話が転がっていくにつれ内澤さんが桃山さんの話を引き出す、という展開になったためですが、結果として、「水族館劇場は、なぜ、発声練習も肉体訓練もしないのか」など、興味深い話がたくさん聞けました。

 すべてが終わるまでは緊張のし通しだったのですが(なぜぼくが?)、打ち上げ突入後、残ってくださったみなさんの満足そうな顔を見るにつけ、ようやくホッとし、その後は、明け方までひたすら飲みました。いつもほうろうを利用してくださっている常連のお客さんや、久しぶりにお会いしたお知り合い、それに、これまであまりきちんとお話したことのなかった水族館劇場の杉浦さんや杉澤さんなど、多くの方とたくさんお話することができ、ほんとに楽しい夜となりました。ミカコ手製の「レンズ豆のトマト煮」が好評だったのもうれしかった。それにしても、飲んでも飲んでもどこかからお酒が出てくる宴でした。差し入れをしてくだったみなさまに感謝。


 自分の生活する町に、毎年テント芝居が、それも水族館劇場がやってくるということがどんなに恵まれたことか。そしてそれは何となく続いていくものではなく、劇団のみなさんや大観音ご一家の絶え間ない努力あってこそであること。そしてぼくたちにできるのは、この劇団の魅力を、この町やその周りの、まだそれを知らない人々に少しずつでも伝えていくこと。じつは今日、お芝居がはじまる前の挨拶で、このようなことを話せたら、と思っていました。生まれて初めて受けたスポットライトの衝撃で、全部吹っ飛んでしまったのですが。



 今年もゴールデン・ウィークが明ける頃から、団子坂上の大観音境内に、あの風変わりなテントが、少しずつ姿を現します。5月23日(金)に初日を迎え、6月9日(月)の楽日までの3週間あまり、またいつものようにぼくたちを、ここではないどこかへと連れて行ってくれるために。
 演目は『Noir 永遠の夜の彼方に』。毎年来ている方も、いまはじめて知った方も、万障お繰り合わせのうえ、お出でください。前売券は、近日中に古書ほうろうでも発売を始めます(今回の公演は、全日、期日指定となります。ご注意ください)。

(宮地)

*1:『メンフィス・アンリミテッド』からの「アイム・ゴーング・ホーム」