声に出して読んでみた盗作 

 続いて昨日の<盗作>トークですが、こちらも楽しかったですよ。ご来場のみなさまに感謝。だいたいの流れは南陀楼さんが早々とアップしてくださっているので、ここではとりあえず思ったことを。

  • クールで年齢不詳な栗原裕一郎さんにはシビれました。こういう佇まいの人がああいう地道な労作をものにするのかあ、と。立居振舞いなども含め、不忍ブックストリート界隈にはいないタイプ。
  • 佐藤わこさんの朗読は期待通り。終演後、畠中理恵子さんに「盗作かどうかなんてどうでもよくなるくらい、聴いてて気持ちよかった」と言っていただき、まさにわが意を得たり。『赤頭巾ちゃん気をつけて』も聴けたし、ほんとお願いしてよかったです。
  • ただ、<盗作>比較に朗読はあまり向いてないよう。『東海道戦争』と『夜の果てへの旅』の組み合わせはバッチリだけど、大藪春彦ロス・マクドナルドの場合はまったくダメというように、対象を選びました。そもそもシャレなんだからまあいいのだけど。
  • ゲストの安藤礼二さん。ずっとニコニコしてらっしゃるのに、話し出すと迫力満点。おまけに用意されネタのおもしろさといったらありません。とくに澁澤龍彦についてのくだり。読者からの<盗作>疑惑の手紙に自ら返信する澁澤の語り口に、会場一同大受けでした。
  • 自分好みの外国作品を元ネタに創作をする澁澤龍彦と、いわゆる「渋谷系」は似ているという指摘には目から鱗。実際「渋谷系」全盛期には澁澤の本もよく売れたという事実があるそうです。確かに音楽の世界に比べたら文学の<盗作>なんて小さいものだけど。
  • 打上げの席では『赤頭巾ちゃん〜』にまつわる小ネタも。栗原さんによると、「薫くん」と内田樹「同級生」であるだけではなく、『赤頭巾ちゃん〜』発表当時、日比谷高校内では「あれは内田が書いたに違いない」という噂が駆け巡ったそうです。なるほど、内田樹は当時からそういう存在だったのか。
  • 庄司薫が影響を受けたに違いない(とされている)『ライ麦畑でつかまえて』の野崎孝訳。でも、どうやらそれにも元ネタがあるらしい、という話で、栗原さんがある本が紹介されたのですが、それについては次の項で。

(宮地)