まぐろボール、天丼、煮玉子

 毎週火曜日のお昼頃になると、三崎漁港からやって来る魚屋さんの軽トラックが店の前に停まります。いつもは、おいしそうなお刺身を買っていく近所の人たちを指をくわえて眺めているだけなのですが・・・。なんと今日はSさんが「まぐろボール」を差し入れてくださりました。「おいしいのよ。これなら冷蔵庫入れなくても大丈夫だから。小腹が空いたときにでも食べなさい」と。
 Sさんは、ほうろうと同じマンションにお住まい。かつては大給坂下の煙草屋の看板娘として鳴らした、別嬪のおばあちゃんです。この界隈の生き字引といった存在で、ときどきされる思い出話も楽しみなのですが(小堀杏奴からのお手紙を見せていただいたことも)、いつもぼくたちのことを気にかけてくださる優しい方。店に冷蔵庫がないことも、家からご飯だけ持ってくることも、承知のうえの「まぐろボール」。残念ながら、今日はご飯を持ってこなかったので夜のおかずに回しましたが、ほんと、とてもおいしかった。


 13時半頃になって、そろそろ弁当でも買いにいこうか、とミカコと相談していたら、古書収集家のKさんが来店。「なんか喰いにいこうや」とお誘いを受けます。ミカコは前にご相伴に与っているので、今日はぼくがお供することにして、すぐそばの「天米」へ。天丼をご馳走になりながら、古本についての蘊蓄や業界のうわさ話を。ともかく稀覯本に関しては、ぼくたちなんか足もとにも及ばない知識を(もちろん蔵書も)お持ちなのです。
 びっくりしたのは署名本の話。糸井重里宛の献呈署名入り『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のことから、そっち方面に話題が移っていったのですが、署名本というのは必ずしもサインの入った状態で古本屋に入ってくるわけではないんだそうです。本を買った古本屋自身がその作家のもとを訪れて、頼み込んでサインを入れてもらい、それに高い値段をつけて売る。なんてことはままある話で、なかには、ダンボール一箱分をごそっと送りつけて、署名本にしてもらったうえで送り返してもらうなんていう猛者さえいるそうです。いやはや。
「でも、そういうのスマートじゃないですよね」というと、Kさん曰く、「スマートかどうかは知らんけど、商売っていうのは、そういうもんだろ」と。うーん、なるほど。でも、それはできないなあ。度胸もないし。


 夕方、こんどははとちゃんが来店。「これ、おみやげです」と、タッパに入った何ものかをいただく。いま、はとちゃんは、アジマル・カフェ「asimul donbura week」の展示をしているのですが、昨日(10日)が期間中のイベント「アジマクハトデー」で、はとちゃんがカウンターに入って「どんぶらカレー」など、あれこれ手料理を振る舞ったとのこと。タッパの中身は、そんななかのひとつ「どんぶらくんのたまご」。中が半熟の、おいしい煮玉子でした。
 あと、はとちゃんからは「一箱古本市の助っ人やります」というありがたい申し出も。その時期は、谷中ボッサで自身の個展もあるのに。感謝。

(宮地)