創元クライム・クラブ


 植草甚一がセレクトして、29冊すべてに解説を書いたことで知られる創元クライム・クラブ。去年、世田谷文学館で催された「植草甚一/マイ・フェイヴァリット・シングス」でも、もちろん展示してありました。ただ、うちのような町の古本店に入ってくることはほんと稀。たぶん今回がはじめてじゃないかなあ。なにしろ、単行本や全集に収録されている解説の方が、よっぽど世の中に出回っているんですから。

 ぼくはそんなに熱心な推理小説読みではないし、とくに外国のミステリーについてはビギナーに毛が生えた程度でしかありませんから、正直このシリーズのこともあまりよく知りません。前記のような理由から、解説だけはひと通り読んだことがありますけど、過度な思い入れもありません。でも、実際こうして現物を手にすると、植草さんの体温が感じられるような気がして、実に幸せな気持ちになりますねえ。
 しかも、この装幀!洒落てます。10年20年かかっても全部集めようという人がいるのも、わかりますよ。函が汚れてしまっているのが残念ですが、配色もほんと素晴らしいし、まったく花森安治というのはスゴい人ですね。

 とまあ、昔だったら絶対に自分のものにしてしまったであろうこの2冊。詳しくはお話しできませんが、ほうろうにやってくるまでの経緯というのがまた風変わりだったし、取って置きたい気もするのですが、でも売ります。惜しいものを売ることで、欲しいものが入ってくる、そういうもんだ、というのが最近のテーゼだし。但し、通販はしませんので、お買い求めの際は古書ほうろうまでお越しください(お値段等は、こちらを)。

(宮地)

  • 「創元クライム・クラブ」については、神戸のユニークな書店「海文堂」のサイトに、とてもよいコラムが載ってました。ぜひご一読を。


  本の生一本<第46回>新装版『クライム・クラブへようこそ』