「鬼頭哲の不思議な日常」


 今日は、先週ここで紹介した鬼頭くんが遊びに来てくれました。

 高校を出てかれこれ20年、ほとんど交わることのなかったふたりが、こうしてまた繋がったというのは、まあ月並みですが、ほんと感慨深いです。インターネットって、すごいなあ、と、小学生(幼稚園児?)のように感心してしまいました(トラックバックの効果も、今回はじめて実感しました。ぼくの文章を受けて鬼頭くんが書いてくれた日記、うれしかったなあ)。

 でも、そうやって別々に生きてきたにもかかわらず、その間に出会った共通の知人が何人もいるわけで、たとえば加藤千晶さんと鬼頭くんは、ぼくが彼女の音楽を知るはるか以前に一緒に演奏していたそうだし、鬼頭くんのお友だちのなかには、うちでやったふちがみとふなとのライブに来てくださった方がいるらしいのです。まあ「少数派にとって、この世は箱庭のように狭い」という経験則からするとまったく不思議はないのですけどね。

 写真は、鬼頭くんが一昨年つくった本。おみやげにいただいちゃいました。
 60ページほどの小冊子で、

の3つのパートからなっているのですが、これがまた、なんとも面白いのです。

 鬼頭くんの音楽や、ジャズをめぐる世界のことを知っているに越したことはありませんが、そうでなくても音楽が好きな人であれば充分楽しめる内容。なかでも、その日記「うさぎのえさ」からの傑作集はおすすめで、じっくり読んでいくと「考える人」鬼頭くんの人柄が浮かびあがってきます(ためしにここの「ポップス」についての考察をご一読ください)。もちろん、思わず腹を抱えてしまうネタもたくさん収録されていますし、古本好きのなかに少なからずいる日記マニアの方々のお眼鏡にもきっとかなうはずです(こちらで買えます)。古くは山下洋輔、最近だと菊地成孔のように、ジャズをやる人にはとても達者な書き手がまま現れますが、鬼頭くんもその系譜に連なる人なんじゃないかと思います。

 個人的には、「俺が目覚めたこの一枚」という小さなコーナーの、篠田昌巳『COMPOSTELA』について書かれたものがもっとも印象的でした。自ら演奏をし、20歳過ぎにリアルタイムで手に取った鬼頭くんと、聴くの専門で、30近くになってようやく耳にしたぼくの体験を並べて語るのもどうかと思いますが、でも、そこで受けた衝撃や、そこから広がっていった世界は、そんなには違わないような気もします。
Blacknuss
 あと、巻頭インタビューのなかにローランド・カークの名前を見つけたとき、失くしていた記憶がひとつ甦ってきました。かつて鬼頭くんが働いていたバナナレコードの店頭で、ローランド・カークの『ブラックナス』の話をしているシーン。名古屋に帰省して悠長にレコード漁っているということは大学生の頃なわけで、少なくとも高校卒業後しばらくはまだ繋がりがあったのですね。さっぱり忘れていたなあ。

(宮地)