水族館劇場が引き寄せるもの

 4月22日水曜日、定休日の古書ほうろうの店内では、今年の水族館劇場の公演に向けて制作推進パーティーが開かれていました。役者さんたちの演し物や、手作りのお料理、プロローグの披露があり、最後に桃山さんから今年舞台に立つ役者さんたちの紹介がありました。何人目かの時、私は思わず、驚愕の声をあげてしまいました。
 数十年、わたしの頭の片隅に何故かずっと残っていた珍しい名前。この場で紹介されるのなら紛うこと無きご本人に違いない。

 こんなことってあるのか・・・。

 子どもの頃、記憶した、指名手配犯が、今まさに、自分たちの店で紹介されている・・・。

 確か小学生の頃でした。家の風呂場の脱衣所に「この顔にピンときたら110番!」と書かれた数人の指名手配犯のチラシが貼ってありました。毎日、毎日、風呂に入る度、「悪い人たち」の顔をじぃっと見るのが日課でした。子どもながらその中の一人の名前に、ずいぶんおめでたい漢字が並んでいるのになぁと感心していました。


 その夜私はその方に、ブローティガンを数冊売り、「お名前記憶しています」と伝えました。ちょっと困ったような顔をされました。当時の写真の顔までは憶えていませんでしたが、ご本人を前にしてみると、確かに面影が甦ってきました。13年服役し数年前に出所されていたのでした。

 2009年、水族館劇場公演「メランコリア 死の舞踏」で、その方は舞台の上で「なんでこんな写真を使うんだ、本物はもっといい男だ」と言って、町角の掲示板に貼られた自分のポスターを剥がし、私は客席からその方の役者姿を観たのでした。

http://aquarius05110.jugem.jp/?month=200904
(先に帰られたので、この中には写ってませんが。)

(ミカコ)