ハードスタッフ・ナイトへのお誘い

 ちょうど1週間後の来週の月曜日、遠く徳島から、小西昌幸さんがほうろうにおみえになります。


 小西さんが30年以上にわたって出し続けている「ハードスタッフ」は、ミニコミという形態に真剣に興味を持っている人なら知らない人のない雑誌なのですが、前号が出たのが15年前ということもあって一般的にはあまり知られていません。ぼくも今回南陀楼さんに「今度こういう人とのトークをやりたいのだけど」と打診されるまで知りませんでした。だから送ってもらった最新号を目にしたときは、それはそれはびっくりしました。愛する対象への尽きることのない思いが、B5版196ページのなか文字量というかたちで凝縮していて、しばし呆然としてしまいました。

 たとえば、80ページ弱を費やされた追悼総力特集「林直人の夢の丘」。林直人という人は関西のパンク・シーン創ったミュージシャンなのだそうですが(町田康とともにINUを結成)、このあたりにまったく疎いぼくにとってははじめて聞く名前でした。でもひとたびその特集のページを開くと、この優しい風貌をした未知の人物に対する興味がどんどんふくらんでいき、生前行われた本人へのロング・インタビューから手間暇かけたディスコグラフィーまで、ひとつひとつを丹念に読んでいくうち、その人となりが浮かび上がってくるのです。あと古本屋としては「幻想と怪奇」誌を手に微笑む写真に思わず引き寄せられたことも書いておかなければいけないでしょうね。林氏は相当な読書家で、幻想文学にも造詣が深かったそうなのですが、インタビューのなかではそちら方面の話も満載です(「牧神」は高かった、なんて発言も)。


 さて、特集以外にもほんと興味深い記事がたくさん詰め込まれているのですが、そういった話をはじめるとキリがないので、「ハードスタッフ」本誌と小西さんについての詳細についてはナンダロウアヤシゲな日々の方をご覧いただくことにして、ぼくは「ハードスタッフ」が入荷してからの店でのエピソードをひとつ紹介しようと思います。

 暮れも押し迫った頃、水族館劇場の桃山さんが久しぶりにおみえになって、来年の大観音での公演(開催決定しました!)についてあれこれお話をしたのですが、その際桃山さんが「ハードスタッフ」を見つけて懐かしそうにこう仰いました。「小西さんは記憶えてらっしゃらないかもしれないけど、水族館劇場も昔、徳島で公演ができないかお願いに行ったことがあるんですよ。創刊号からずっと持ってますよ」。結果的には実現しなかったそうですが、水族館のみなさんをして「小西さんだったらひょっとしたらなんとかしてくれるかもしれない」と思わせる力があるのでしょうね。


 というわけでみなさま、そんな小西さんの話を聞きに、来週はぜひほうろうまでお越しください。ぼくもとても楽しみにしています。

(宮地)

『ぐるり』プレゼンツ
 南陀楼綾繁トーク十番勝負 その9
「ハードスタッフ・ナイト〜先端的硬派雑誌の復活〜」

出演
 小西昌幸(『ハードスタッフ』編集発行人、先鋭疾風社代表)
 南陀楼綾繁(ライター・編集者)
 

 パンク、幻想文学、特撮、テレビドラマ、漫画、ブックデザインなど、さまざまな文化事象から自らが得たものを熱い筆致で語るミニコミ『ハードスタッフ』。1976年に創刊され1993年までに11号が発行された。それからナンと15年ぶりとなる最新号(追悼総力特集・林直人の夢の丘)の発行を記念して、編集発行人の小西昌幸さんに徳島から来ていただき、お話を伺います。小西さんのもうひとつの顔である「創世ホール」での仕事についても、たっぷりお聞きします。

  • 日時   2009年1月19日(月) 18:30開場/19:00開始
  • 場所   古書ほうろう 文京区千駄木3-25-5(電話:03-3824-3388) http://www.yanesen.net/horo/
  • 入場料  1000円(要予約、飲みもの持込み自由)
  • 予約方法 ビレッジプレス「ぐるり」編集部 info@village-press.net 03-3928-7699(古書ほうろうでも店頭でのみ受付ます)


小西昌幸(こにし・まさゆき)
 1956年、徳島県北島町生まれ。1976年からミニコミ『ハードスタッフ』を編集発行。94年から北島町立図書館・創世ホールで企画広報を担当。これまでに紀田順一郎種村季弘杉浦康平らの講演会を企画。また、海野十三の会にも所属し、『JU通信・復刻版』『海野十三メモリアル・ブック』を発行。徳島謄写印刷研究会事務局長、徳島アイルランド音楽愛好会会員でもある。