群林堂の豆大福

 いつもより早めに家を出て、10時半ごろけものみち計画へ。内澤さんと合流して、デザイナーの板谷さんの仕事場へ。ぼくは内澤さんと板谷さんが技術的な部分について確認を取りあっているのを横で聞いているだけでしたが、とりあえず、ひとつの山は越えました。

 MAPが一段落ついて、いよいよ品出しに励まなければいけないのですが、今日は2日間にわたる名古屋滞在記を書く日に。時おり、本を売ったり買ったりする以外は、カタカタカタカタとキーを叩き続けました(終わらなかったけど)。そんな一日でしたが、どうしても大書しておかなければならないのが、あるお客さまのこと。


 午後3時のおやつどき、その人はマウンテンバイクに乗って颯爽と現れました。50代と思しき男性です。「全部100円ね」と、外の均一雑誌を14冊お持ちになり、会計のあと、「根津のたいやき屋っていうのは、ここからどれくらい」とお訊きになります(もちろん、不忍ブックストリートMAPを開いて説明します)。ここまでは、とくにどうということもない話。
 しかしそのあとのこと。リュックサックからおもむろにタッパを取り出すと「これひとつあげるよ」と。見るとそこには4個の豆大福がお行儀よく並んでいます。曰く「講談社の前に、群林堂って店があってね、僕はここの豆大福が東京で一番好きなんだよ」。さらに続けて「たいやきはね、ひょっとしたら根津の店のが一番好きになるのかもと思って、いまワクワクにしてるんだ」とも。しかも、「良かったら、雑誌もう1冊、何でも持ってってください」と言うと、「これは差し上げたんだから、代わりに貰うわけにはいかないよ」と辞退される気っぷの良さ。ああ、こんな大人になりたい。
めぐらし屋


 お客さまや近所の方から差し入れをいただく、ということ自体は、とくに珍しいことではありません。でも、(たぶん)はじめてのお客さまが、しかもわざわざその日買ってきたものをくださる、というのは、ちょっと記憶にないですね。名も知らぬお客さま、どうもごちそうさまでした。ほんとうれしかったです(ちょっと前に堀江敏幸の『めぐらし屋』を読んで以来、豆大福はちょっとしたマイブームなのです)。

(宮地)