ポレポレ東中野で『人間の街―大阪・被差別部落―』

 先週に引き続き、ミカコと「”食べる”映画特集」。最終日最終回は補助席も出る大入り満員。屠畜場のシーンでの、地面に転がした牛の皮を剥いでいく包丁捌きに見惚れる。どんな世界もそうですが、一流の技術を持った人の動きというのは、ほんと美しい。しかし、少なくとも日本では、このような職人芸が尊重されるどころか真逆なわけです(他の国ではどうかという話は『世界屠畜紀行』で)。
 主人公格として取り上げられる、この「屠畜技術員」の「おっちゃん」は、読み書きができない。にもかかわらず(だからこそ?)小学校や自宅でカメラを前に話すその言葉は、誰よりも自分のものであるように感じました。「わが子のためにも差別はなくしたい」「でも部落は部落」。そのどちらもが本心で、その間を真摯に揺らいでいる。だからこそ「おいしい肉が食べられること以外、良いことなんかなんもない」という言葉は重い。

 これがわずか20数年前のこと、というのもショックでした。ぼくの認識が甘いだけなのですが、何も知らなければ、3、40年前の作品だと思っただろうな。

 あと、最後に流れた主題歌、よかったです。ラングストン・ヒューズの詩を小室等が訳して歌をつけたもの。バックのメンバーには、千野秀一などの名前もありました。

(宮地)