山本容子のバンドエイド


 今日は「お気に入りのカバー」で何か書けたらいいな、と最初から思っていて、そういう目で買取り済みの束をいくつも解いていったわけですが、そんななかこの本が出てきて、「ああこれだな」と。こういうシンプルで上品な装幀、好みです。でも、その時点では、この絵が山本容子だってことには気付いてなかったので、いざ書く段になって「どれどれ」とクレジットを見たときはびっくりしましたね。で、奥付を開いて「1979年初版」とあるのを見て、2度びっくり。「容子さん、こんな時期から本の仕事してたんだ」。しかも菊地信義と。でも、このバンドエイド、言われないとわからない、というか、言われてもピンと来ないなあ。好きだけど。

 もう10年ぐらい前のことですが、ミカコと夫婦して容子さんにイレ込んだ時期がありました。鵠沼の画廊まで作品を観に行って、気がついたら買ってたとか、限定本を買うために、あろうことかルイ・ヴィトンに足を踏み入れてしまったとか、ちょっと今では考えられないくらい。その後、いつの間にか熱は冷めたのですが、たぶんそれはこんな仕事をしているせいもあるんでしょうね。これでもかこれでもかと押し寄せる容子さんが表紙を飾る本に、さすがにちょっとお腹いっぱいになってしまったようです。

 まあ、でも、嫌いになったわけではもちろんないので、今でも店に入ってくれば眺めたりはします。もう買うことはないけれど。最近では、石田千さんの『月と菓子パン』は良かったです。ハードカバーと文庫、両方買った人多いだろうな。あと、まだ見ていないのですが、鉄道博物館のステンドグラスは楽しみにしています。

 本来の主役である古山高麗雄については、何も触れないまま終わってしまいましたが、ここはそういうコーナーなので悪しからず。でもこの本、読んだことないと思っていたのですが、ページをパラパラめくっていたら、少なくとも冒頭の「艶笑落語傑作選」には憶えがありました。前に入ってきたときかなあ。荻原魚雷さんの「全著快読 古山高麗雄を読む」によると、この作家の数少ない競馬小説も収録されているようですし、この機会にちゃんと読んでみようかしら。

(宮地)