矢川澄子のユリイカ

 10分ほど遅刻して店を開けると、ひとりのお客さまがすぐに入ってこられて、新入荷棚に並んでいる矢川澄子特集の「ユリイカ」を手にされる。曰く、

「よかったですわ。昨日ネットで見て、こりゃもう売れてしもたかと心配で、今日は飛んで来ましたんや。おたく、毎年いま頃、この本出しはりますやろ。今年もそろそろや思うて、チェックしとったんですわ。去年電話したときは、もう売れたゆうことでしたし、ああ、ほんまホッとしました」

とのことなんですが、こんどはこっちが「ほんまかいな」てなもんです。


 確かにここ数年、結果的に毎年1冊ぐらいは出しているような気もしますし、出せばすぐに売れていくし、しばしば問い合わせも受けますけど、「そろそろ矢川澄子ユリイカ出す季節だなあ」なんてことはまったくないので。一応「本日の品出し」の履歴を調べてみたら、なるほど去年は1月と3月に出していて、このお客さまの印象もあながち間違いではないのですが、ほんとにそんなことができるのなら、この商売も楽なもんです。でもみなさん、欲しい本を手に入れるために、いろいろなことを考えてらっしゃるのですね。勉強になりました。
(宮地)


*文中の関西弁は、だいたいの雰囲気を再現しようとしたものです。ネイティブの方からすると間違いだらけだと思いますが、どうかお見逃しください。