コミさんの検印

 ハヤカワ・ポケミス版のカーター・ブラウンがまとめて入ってきました。うち7冊が田中小実昌訳。ほとんどが初版だったのですが、それを確認するために奥付を見ていったときのこと。

 古い本なので、1冊ずつ訳者の検印が押してあるわけですが、ふと思い立ってちゃんと見てみると「小実昌」というハンコでした。「そうだよな。田中はいっぱいいるもんな」と感心しながら次の本に移ると、こんどは

  まこ
  さみ

こういう茶目っ気は好きだなあ。デザインもコミさんらしいなんともチャーミングなもので心温まります。さて、こうなってくると「当然ほかにもあるだろう」と思うわけで、ワクワクしながら次の本に向かったのですが、「こみまさ」「こみまさ」「検印省略」「こみまさ」と、なかなか別のは出てきません。でもやっぱりコミさん、最後の1冊でちゃんと期待に応えてくれました。3つ目のハンコはずばり「コミ」。これはパッと見、思いっきり「ゴミ」なのですが、やはりインパクト大。ほんと楽しい人です。

 以上のようなわけで、コミさんが少なくとも3種類のハンコを押し分けていたことはわかったのですが、さらに種類はあるのか、あるいはその押し分けはどのようにされていたのか、など疑問は尽きません。なんと言ってもコミさんだし、有名な話のような気もしますが、ご存知の方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。以下参考までに、今日出したもののタイトルと刷り数、及びその検印を記しておきます。

 『おんな』     初版(こみまさ)
 『素肌』      再版(こみまさ)
 『ストリッパー』  初版(こみまさ)
 『女虎』      初版(小実昌)
 『夢見るは死の面影』初版(こみまさ)
 『ダムダム』    初版(コミ)
 『女ボディガード』 初版(検印省略)

 一緒に入ってきたヘンリイ・スレッサーなどと一緒に、早速文庫新入荷棚に並べました。買う買わないはともかく、検印だけでも眺めてみてください。

(宮地)