アルテスパブリッシングの本 全点フェア 好評開催中! 明日はスペシャル・トーク。

 アルテスパブリッシングのフェアをはじめて2週間あまりが過ぎました。

 http://www.yanesen.net/horo/info/detail.php?id=32


 一箱古本市当日と重なったことに加え、代表の鈴木茂さんの一箱出店なども相まって、すでにたくさんの方々にご来場いただいています。アルテスさんの本も期待以上に売れてますし、多くの新しい出会いもありました。とは言えまだ全体の3分の1が過ぎたばかり。一箱古本市の喧騒が去った今日からが新たなスタートと心得、滞りがちだった品出しにも精を出すつもりです。ここでも順次アルテスの本を紹介していきますので、どうぞご期待ください。
 さて、そんなリスタートを飾るにふさわしいイベントが、いよいよ明日開催されます。片山杜秀さんと川本三郎さんをお迎えするという、ちょっと信じられない一夜。なかでも川本さんはぼくの嗜好に多大な影響を及ぼした方。初めてお目にかかる日を前に、早くも緊張気味です。明日の本番では、たとえば日本映画についてのディープな会話なども伺ってみたいですが、俎上にのぼる話題がなんであれ、好きなものとの付き合い方についてのおふたりの言葉に耳を澄ませたいと思っています。

偏愛談義「古書も映画も音楽も」
 片山杜秀(音楽評論家)× 川本三郎(評論家)
   
『音盤考現学』『音盤博物誌』で世を驚かせ、新刊の『クラシック迷宮図書館』2冊も好評の片山さんと、ごぞんじの評論家・川本三郎さんの初顔合わせが実現しました。幅広いジャンルに旺盛な好奇心で取り組んでいるという点では似たもの同士のお二人ですが、さてはてどんな話が飛びだすのか、お呼びしたわたしたちも楽しみです。

  • 日にち 5月11日(火)
  • 時間  18時半開場/19時開演
  • 入場料 1000円

 *まだ若干お席に余裕がございます。ご予約はお電話で、03-3824-3388 まで。


 アルテス・フェアのことを、もう少しだけ。
 昨晩のこと。旧安田邸での演奏会のあと、渋谷毅さんと平田王子さんを囲んでの打ち上げがここで行われました。その際、アルテスの棚をご覧になった渋谷さんが「この店は古本屋じゃないの?」と、不思議そうに仰ったことが印象に残ってます。自分にとって今回のフェアはとても自然な流れで実現したのですが、やっぱり古本屋で新刊のフェアをするというのは、まだ見慣れない光景なのだなとあらためて感じました。そのあたりの経緯を、フェアに合わせてつくったリーフレットに記しました。以下転載しますので、よかったら読んでみてください。


フェアの開催にあたって


「アルテスパブリッシング」という名前の出版社の存在を知ったのは 2007年の夏の終わりで、多くの人同様『村上春樹にご用心』ででした。「内田樹の研究室」でそんなタイトルの本が出ることを知って、ちょうど来店していた往来堂書店の笈入店長と「ねえ知ってる?」「で、どっから出るの?」「えっと、アルテスってとこみたい」なんて会話をしたことを憶えています。やがて書店に並んだその本は、内容もさることながら「雪かき」をテーマにした装幀にガツンとやられ、「いい本つくるなあ」と感心したわけですが、その時点ではまだ「センスのいい新しい出版社ができたんだ」という認識でした。


 つぎに「アルテス」の名前を見たのは、それから半年ほど後。古くからの常連さんが興奮した面持ちでレジにやってきて、こう教えてくださったときのことです。 
「ピーターさんの『魂(ソウル)のゆくえ』が復刊されてましたよ!」と。
 ともかく音楽が好き。でもって活字中毒。当然、音楽について書かれたものもそれなりには読んできましたが、そのなかでもこの本は特別です。絶版状態が続いていることを苦々しく思っていたこともあり、すぐに「その素晴らしすぎる出版社はどこだろう?」と調べてみたら・・・。そこは『村上春樹にご用心』の版元で、なおかつ「音楽を愛する人のための出版社」。いやあ、びっくりしました。


 それ以降は勝手にシンパシーを抱いているような状態。たとえば油井正一『ジャズの歴史物語』の復刊に「こんどはそう来たか!」と叫んだり、片山杜秀さんの吉田秀和賞受賞の際には「よかったなあ」とうれしくなったり。でもこの冬のはじめ頃、そんな一方通行な気持ちに劇的な変化が訪れます。間を取り持ってくれたのは、ツイッター!(笑)。アルテスの代表・鈴木茂さんと会話のようなものを交わすうち、「来年の一箱古本市の時期にフェアがやれたら」という思いがふつふつと湧いてきてしまい、結局一度お会いしただけで実現することとなりました。好きな版元の全点フェアということでは、編集グループSURE羽鳥書店に続く第三弾となるのですが、共通の知人や地縁をきっかけにしたそれらと違い、こんどはこれから関係を築いていくまったく新しいケース。今後の古書ほうろうにとっての試金石となることは間違いなく、身の引き締まる思いです。


 次ページに掲載した既刊一覧をご覧いただけばわかるように、アルテスさんの出してきたものは、もちろんほとんどが「音楽についての本」です。でも、決してそれだけではなく、「音楽が別の世界への扉となるような本」が多いのが特徴。もう一人の代表・木村元さんは、創業間もない頃のブログに「音楽のような本をつくりたい」「その本を読むことじたいが、なにかよい音楽を聴いたときと同じような体験をあたえてくれる――そんな本をつくれたら」と書かれていますが、まさにそういう気持ちが伝っわってくるラインナップだと思います。そんなアルテスの本を、この機会にぜひ手に取ってみてください。きっと新しい出会いがあるはずです。

(宮地)