THE LAST RUNNERS


 昨日の鬼頭ブラスの余韻が自分のなかに残っているのと、雨でお客さんがさっぱりなのとの相乗効果で、品出しが進む進む。その成果はこちらで見ていただくとして、久しぶりに鉄道関係の本をまとめて出せたので、それについてちょっとだけ。

 写真の『ザ・ラストランナーズ』というシリーズはすごいですよ。たとえばこの第3集。全部で88ページと決して大部ではないのですが、最初から最後まで、表紙のような電気機関車のモノクロ写真がひたすら載っています。その数250枚あまり。詳しいことはわからないのですが、あとがきから推察すると、花井正弘というひとりのカメラマンが、仲間に呼びかけて写真を集め、そのなかの選りすぐりのものをテーマ別にまとめて配置し、なおかつ身銭を切って印刷、出版していたシリーズのようです。

 全部で19人の方々が撮った1枚1枚の写真も多彩で、それらを撮影するのに費やした月日や労力を思うと頭も下がりますが、でもこの本は、間違いなく編集した花井さんのものです。とくに、それぞれの写真に付けられたキャプションは、データ的なものを過不足なく入れながらも充分に気持ちのこもった文章となっていて、その機関車への愛情には心うたれます。

 たとえばこのような。「陽だまりの89号」と題された素晴らしい写真に付されたものです(撮影は田藤雅彦氏。1988年2月20日)。

 午前11時19分、やわらかな陽ざしを浴びてEF5889号が品川駅8番線に静かにたたずんでいる。これから単機で新鶴見へ向かい、武蔵野線からやって来る水戸運転所81系和式客車をひいて東海道本線を下るのだ。冬期にはすっかりおなじみとなった89号のこの仕業もいつまで見ることができるのだろうか。
 私はヘッドマークもイベント列車もほしくはない。いつでも現役機のような89号のこんな光景をずっと見ていたい。


 ここ1年ほど、自転車通勤の行き帰りに田端運転所のそばを通ることが多いので、よくこのような電気機関車を眺めています。それこそ、手を伸ばせば触れられるほどの距離で(比喩でなく本当に)。出勤途中の、太陽の光を受けて輝く姿ももちろん悪くはないのですが、帰りしな、暗闇のなか佇みながら見せる硬質な表情にはとても美しいものがあり、しばしばハッとさせられる毎日です。

 鉄道に乗るためによくひとりで旅をした10代の頃、ぼくの興味はもっぱら旧型の客車にあったため、それを牽引する機関車には正直あまり感心を払っていませんでした。それが、それから長い時間が過ぎ、このようにあらためて機関車の魅力に気付いたいま、待っていたかのようにこういう本が入ってくる。たぶん、この本とは縁があったのでしょうね。売るの止めちゃおうかな(笑)

(宮地)