俳句、瑞々しい二冊。
『ききみみ手帖』 村田もも子 著 1,200円(税込)
挿し絵 刈谷サチヨ
装幀・編集 妹工房 志村雪菜
著者は、ご両親がやってらした北九州市の古本や檸檬を、ご主人と後を継がれて間もない初々しい古本屋さん、村田もも子さんです。今年の七夕に文庫本サイズのかわいらしい句集をつくられました。
もも子さんのご両親の出会いは俳句の同人誌だったそうで、幼い頃から俳句を身近なものとして育ったもも子さんが、こうしてご自分の句集をつくらるというのは、なんだかとてもすてきだなぁと思います。
タイトル「ききみみ手帖」というのは、昔話「聞き耳頭巾」から。
春、夏、秋、冬の季節ごとに十二〜十三の句が詠まれ、刈谷サチヨさんの挿し絵が彩りを添えています。
黒猫がビロード纏う星月夜
わたしはこの秋の句が、いいなぁと思いました。
あとがきによると、もも子さんは街にも、海や山へ滅多に出掛けない出不精なのだそうで、確かに目の前に現れる句は、読んでいるわたしにとっても特別な日の、ではなく、目の前に自然と自分の日常が浮かんできて、すんなり身体に馴染んできます。
妹工房 志村雪菜さんによる装幀もかわいいです。トレーシングペーパーにカラー印刷を施したカバーと、本体表紙のイラストとのちょっとしたズレなんかにも味があります。そして裏表紙にはスポットライトを浴びるキュートな3人の後姿が。
まったくもって、チャーミングなもも子さんに雰囲気がぴったりだと思います。
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『hi→』 vol.01 2010 autumn 500円(税込)
http://hihaiku.web.fc2.com/
参加者 衣衣、楢、伊吹、藍子
calender art work 朝日聡子
design 日比 藍子
千駄木往来堂書店の日比さんをはじめ、女性4人の句会から生まれた俳句zine『hi→』。
「俳句とその変奏 季節に抱かれた言葉とそのまわりをいろんなめだまで見てみる」と表紙に説明があります。
開くと先ず、秋号のテーマ「月」と「秋の果物」を使って4人が詠んだ句が現れ、ひっくり返すと、その中のいくつかの句を元に、別のメンバーが、物語を、返歌を、詩を編み、ひとつの句が違うものに変化してゆきます。そのさまは、自由で柔軟で、読むものの心を解き放ってくれます。
裏面は、月齢と二十四節気付きの10、11、12月のカレンダーになっていて、朝日聡子さんの「夜気」というタイトルのアートワークがA2全面に広がります。季節ごとに絵もたのしめる贅沢なzineです。
スマートで、且つ、優しい印象のデザインも日比さんが手がけられています。往来堂書店のD坂文庫の帯デザインや、お馴染み、手作り乱歩メモ帳も、そして『往来っ子新聞』も日比さんの仕事です!