ホームムービーの日、はたあきお、『汽車 映画ノスタルジア』

 今日はホームムービーの日。仕事は19時で切り上げ、雨のなか根津の宮永会館へ行ってきました。家庭で撮られたフィルムを、撮影者や縁の人とともにワイワイ言いながら観る、というこの企画の魅力については、実際に足を運んでいただかないとなかなかうまく伝えられないのですが、でもほんとに面白いんですよ。今日もいずれ劣らぬユニークなフィルムが揃いました。

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 この会場ならではのお楽しみは、この界隈の昔の姿を写した作品に必ず出会えることなんですが、その点で興味深かったのは、宮本瑞夫さん提供の『逢初マーケットの改装』と松下健児さん提供の『都電』。昭和33年頃の根津交差点付近を撮った『逢初マーケットの改装』は、戦後の闇市然としていた区画を整備し直す過程を描いたもので、貴重な作品。福島不動産が今とあまり変わらない風情だったのが印象的でした。不忍通りから都電が消える最後の日を描いた『都電』も力作。なかでも明け方の澄んだ空気のなかを走る20系統の場面は特にすばらしく、高い建物がほとんどない広々とした空に、路面電車の架線が格子縞を描くさまは心に残りました。

 と、これだけでも大満足というところなのですが、ぼくにとっての最大の演し物は、休憩のあとに上映された、はたあきおさんの『水鏡』でした。昭和47年頃の只見線の一日。珍しく風のない日だったそうで、鉄橋を渡る蒸気機関車や川沿いを走る貨物列車が川面に写る様子が、ちょっとあり得ないぐらい美しく捉えられていて、大変興奮しました。只見線は昔からとても好きな線で、かつては何度か乗りにも行ったのですが、今日観せていただいたのは、自分が乗っていても絶対に見ることのできない光景だったので。
汽車 映画ノスタルジア
 はたさんのお名前は、鉄道ファンの間ではかなり知られていて、その膨大なフィルムの一部はDVD化もされています。また、高円寺「円盤」では、不定期ですが趣向を凝らした上映会も行われています。昨年催された、はたさんの作品に中尾勘二と古池寿浩が音楽を付けるという楽しすぎる企画では、映像に見とれた中尾さんが全然演奏しない、なんていう一幕もありました。そして、実はうちの店でも、共著ですが本を1冊取り扱っています。タイトルは『汽車 映画ノスタルジア』。古今東西の映画から、汽車の登場するものを選んで紹介する労作で、映画と鉄道が好きな人にとっては必携です。ぜひ一度、手に取ってみてください。

http://tembo-books.jp/books/books-122-7.html


(宮地)