1980年、名古屋の小学生は「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ」を口ずさむ

サッカーボーイズ13歳―雨上がりのグラウンド
 帰宅後、『サッカーボーイズ13歳 雨上がりのグラウンド』を読みはじめ、そのまま読了。先日ちょっとだけ紹介した『サッカーボーイズ 再会のグラウンド』の続編。正直前作ほどではなくって、ボロボロ泣いたりもしなかったけれど、登場する少年たちの今後は気になるので、これからも続きが出たら読むのだろうなあ。

 年に数回、この年代の少年たちの試合を観る機会があります。場所はNACK5スタジアム大宮アルディージャのホーム・ゲームに開門直後に入場すると、選手たちがアップをはじめる前に地元のサッカー少年団同士の試合がはじまるのです。たぶん公式のものではなく、どちらかと言えば練習試合のようなものだと思うのですが、普段はあんな立派なスタジアムでゲームをすることなんてまずあり得ないわけで、そんななか、晴れがましさと緊張感でややぎこちなくプレーをする少年たちの姿をビール片手に眺めるのは、結構和みます。まだまばらなお客さんたちの声援や拍手も暖かくてとてもいい時間なのですが、これからはそんな彼らの姿もまた違って見えるのでしょう。


 この小説、とくに『再会のグラウンド』に強く心を揺さぶられたのは、やっぱり自分の小学生時代のことが思い出されたから。といっても、当時ぼくがしていたのはサッカーではなくバスケット・ボールだったのですが、でもそのこと以外は驚くほど似ている、というか普遍的なものなんですよね。毎日朝夕の練習、レギュラー争い、勝利の喜び、そして「このメンバーでの最後の試合」。6年生の秋から冬、少しずつ出場機会が減ってゆき、最後の試合ではほとんどベンチに座っていたぼくがタイムアップの直後から号泣しているのを見て、「試合に出てないお前が何でそんなに泣いてるんだ」と、やはりレギュラーを外された同級生が怪訝な顔で問いかけたこと。そのときはあまりのことに何も言い返せなかったけれど、どうして奴にはこれがぼくたちの集大成だってわからなかったんだろう。まあ気持ちはわからなくもない。担任の先生でもあった監督は、夏でシーズンが終わった野球部の連中を途中入部させた。彼らは背が高く運動神経もずば抜けていたから、たちまち上達してスタメンを奪う。当然外された者は納得がいかない、というような伏線があったわけだし。でもさ、だからといってこれがぼくたちのチームであることに変わりはないじゃない。心の中ではそんな思いが渦巻いていたけど、言葉にすることはできなかったんだよなあ。

 なんか脱線しまくってるけど、これを書いているうち、ほかにも忘れていたことがいっぺんに甦ってきましたよ。たとえば、さっきの少年団の子たちにとってのNACK5スタジアムのようなことが、ぼくにもあったこととか。愛知県体育館での、たしか日本選抜とアメリカのどっかの大学との試合前、たぶんクジにでも当たったのかな、詳しい事情は思い出せないけど、数人の見知らぬ少年たちとともに大観衆の前でフリースローをしたっけ。もうガチガチで、当然入らなかったけど。あと、これはまた別の話だけど、同じ区内の女子の強豪チームと練習試合をしたことなんかも。小学生高学年だと女子の方が発育が早いし、彼女たちのなかにはその後の人生で全国大会の常連になるようなメンバーもいたようなので、完全にぼくたちが胸を借りるという立場。チームの強化という点では悪くない企画だったとは思うけど、いくら小学生とはいえ女子とガチンコでバスケットをやるというのは、まあ気が散るのなんの。あちらさんは全然気にしていない風だったけど。

 当時のみんなとはもうずいぶん長い間会っていないけど、今頃どうしているのだろう。キャプテンだった塚本くんは、身長も低かったし運動神経もそれほどではなかったのに、ともかく練習の鬼で、何よりバスケットを愛していた。その入れ込み具合はいま思い出しても頭が下がるし、ずっと敵わないと思っていたのだけど、この『サッカーボーイズ』の主人公がね、彼に似てるんですよ。今日の日記がこんな文章になってしまったは、たぶんそのせいじゃないかな。ぼくたちはウマがあって、部活のとき以外もよくつるんでいてね。学校のすぐそばにあった彼の実家の氷屋の2階で、NHK-FMの「ポップス・ベスト10」の録音テープをよく聴いたこととか、ほんと懐かしい。「このバンドが良いんだ」と言って、ぼくにポリスを教えてくれたっけ。ラジオでは、スティングがつたない日本語で「ドゥドゥドゥ、デ、ダダダ、は、オレのコトバさ」と歌い、そして帰り道、本屋の店頭に並んだ「週刊少年サンデー」には、『がんばれ元気』とともに『ダッシュ勝平』が載っていました。


 さて、昔話はさておき、大変なのはアルディージャです。今日も名古屋でグランパスにボコボコにされ泥沼の4連敗。いよいよお馴染み残留争いの足音が。そのうちの2試合は現場で観戦しました。磐田戦のようにまったくどうしようもない、負けて当然のゲームもありましたが、内容的には悪くなかったものの決めるべきとこで決めきれなかった柏との一戦が痛かったですねえ。経験上、ああいうゲームを落とすと必ず負の連鎖が始まるのです。またしばらく行かれないけど、なんとか立て直してほしいもの。去年までに比べたら、ほんとよいサッカーしてるのだから(まあ、そのサッカーが研究されて壁にぶち当たっているのだけど。あと戦術が夏向きじゃないというのもあるんだろうなあ)。下の写真は、その連敗中の一コマ。大宮公園の夕暮れと、日立台の満月。サッカー場から見る空は気持ちいいですよ。

(宮地)