お客さんとの会話

  • その1。店にて。

 レジでお会計の際、一箱古本市のチラシをみた中年の男性。
「ああ、これね、この辺の店の前とかでやるやつだよね。あなた行ったことある?」

 

  • その2。夕食どき「深圳」にて。

 ほうろうにも時々みえるお客さんと隣り合わせての会話。この若い男性とは、前にやはり「深圳」で『カラマーゾフの兄弟』の話をしたことがあります。

加賀乙彦って読まれます?」
「高校生の時に読んだきりですね。」
「当時どうして手に取ったんですか?」
「新聞に連載されてたりして、話題になっていたからかなあ」*1
「じゃあ、人気があったんですか?」
「人気がある、って感じじゃないけど、新刊が出たら必ず買う熱心なファンがたくさんついていたんだと思う」
「最近、人に薦められたんですよ。」
「ああ、加賀さんはドストエフスキーに影響を受けてますからね」
「へえ、そうなんですか。でも、本屋さんに全然ないんですよ」
「それはあれじゃないかな。亡くなられたから。亡くなられてしばらくすると、やっぱり出版点数は減るから」

 というわけで、お客さんに嘘教えちゃいました。加賀乙彦さんはご存命、しかも連載中の小説もあるようです。加賀さん、ファンのみなさま、ごめんなさい。何とも恥ずかしい話なのですが、話の流れからいって他のどなたかと間違えているわけでもなく、完全な記憶違い。これは結構尾を引きそうなショックです。ああ。
 でも、以前はよく目にした加賀乙彦の文庫本、最近めっきり見かけなくなったのは、まあ事実。どうしてなんでしょうね。
(宮地)

*1:後で思い出したんだけど、本当は中学生のときの国語の教師に「いま朝日で連載されている『湿原』はぜひ読むべきだ」と言われたから。