千葉の休日、フクアリ→イケア

 ここのところ非番もへったくれもなかったのですが、今日は一日ぽっかり空いたので、千葉までサッカー観戦に。

 大宮アルディージャを応援するようになってはや7年になりますが*1、シーズン初観戦がこんなにずれ込んだのも、それがアウェーなのもはじめて。こうなることはあらかじめわかっていましたが、そこそこ好調なチームを尻目に、まったく応援に行けないというのは辛いものです。サッカーは、1試合観られなかったことで感じる喪失感が、たとえば野球に比べると遥かに大きいんですよね。ひとつには、競技の特性上ゲームの過程を活字で再現しにくい、ということもあるのですが、ぼくのサッカーに対する想像力もまだまだなので。


 自宅を12時頃出て、自転車でいったん店へ。「不忍ブックストリートMAP」の広告費集金のため、谷中、根津辺りの広告主さんをいくつか回り、その後一箱古本市の大家さんをしていただくファーブル昆虫館」にあらためてご挨拶に。店主さんがご不在だったり臨時休業だったりと、あまりはかは行きませんでしたが、とりあえず今日の仕事はお終いにして、意気揚々と日暮里駅へ。
明治バベルの塔―山田風太郎明治小説全集〈12〉 (ちくま文庫)
 まずは13時47分発の成田空港ゆき特急で京成津田沼まで。次いでちはら台ゆき各駅停車に乗り換え千葉で下車。車中の読書は山田風太郎の『明治バベルの塔』より「牢屋の坊ちゃん」。風太郎の明治もの、全部読んでるつもりだったけど、この前入ってきたこの本は未読でした。もちろん面白さ抜群で*2、こういうのはなんだか得した気分。未発表の作品を自分だけが見つけたようなものですから。

 スタジアムは蘇我なので、直行するのなら幕張本郷で乗り換えるのが安いし便利なのですが、千葉で降りたのはせっかくなのでどこか古本屋に行こうと昨夜思い立ったため*3。駅から歩いて5分ちょっとの「稲生書房」は、神保町にありそうな、天井の高い昔ながらの古本屋。倉庫のようにも見える中2階には全集類や郷土資料などが雑多に積まれていましたが、1階には比較的手頃なものもあれこれありました。文庫本がたくさんあるのもうれしく、訪問の記念に神保璟一郎の『名曲をたずねて』全2巻(角川文庫版)を400円で購入。前の所有者が小口に「バッハ」「ハイドン」などと索引を書き込んでいるので古本屋的にはマイナスなのですが、「マーラー」と「ブルッフ」だけが赤字なのがなんだかおかしい。しかし、ブルッフ・・・。ヴァイオリン協奏曲にハマったんでしょうね。そう言えば、全然関係ありませんが、同じ通りの中古レコード屋DROPS RECORD」も良さそうなお店でしたよ。時間がなかったのでぐるっと回っただけですが、レゲエのアナログ盤なんかもありました。



 JRの駅に戻り、外房線の快速でいよいよ蘇我へ。ジェフ千葉のホーム・グラウンド「フクダ電子アリーナ」に来るのは、一昨年の秋に続きこれが2度目。そのときは勝っているのでスタジアムまでの道のりは良いイメージに彩られています(去年は負けてるんですけどぼくは参戦していないので)。ここはうちのチームの本拠地「NACK5スタジアム大宮」と甲乙付けがたいほどの見やすいスタジアムで、わざわざ出かけてゆく価値のある場所ですが、さらにもうひとつ、JFE(旧川崎製鉄)の工場群に隣接している、という特色があります。アウェー側のスタンドから見えるこの景色は、世界的にもあまり類を見ないのでは(テキトー言ってますが)。工場萌えのみなさま、ここは必見、悶絶確実ですよ。次回こそはミカコも連れてこなければ。

 試合の方は、前半から2点入るご機嫌な展開。コアなサポーターからはやや離れ上段に陣取るぼくのようなファンの間からも自然と歌声が口をつきます。そして後半、いったんは追いつかれたものの、終了間際に2点取り返すという、このチームらしからぬ劇的な結末となり、ゴール裏はお祭り騒ぎ。ぼくも結局後半はほとんど歌いっぱなしでした。ふと見ると手のひらも真っ赤になっていましたが、いやあ、楽しかった。贔屓のチームのゴールが決まった瞬間の気持ちの昂りというのは、ちょっとほかでは得られないものです。4点取ったのなんて一昨年の開幕戦以来だけど、あのときも相手は千葉。高揚した気分で帰路につき、その足で「稲垣書店がやってきた」の打ち合わせに行ったのでした。もうずいぶん前のような気がするけど、まだ2年前のことなんだなあ。

 今日もまた、あの日のような誇らしい気分の帰り道。オレンジのレプリカの胸を張り、松屋で290円の牛丼を食べ、駅の反対側の洋菓子店「アンシェンテ」でミカコへのお土産を買い求め、こんどは京葉線で南船橋へ向います。少し前まで南船橋と言えば「ららぽーと」でしたが、いまではすっかり「イケア」。でも、正直ぼくには関係のない場所。できれば踏み入れたくはなかったのですが・・・。


 ここ数年、ほうろうの懸案事項としてずっと挙っていたものに「スツール問題」というのがあります。現在うちの店の帳場には、かつて花屋をしていた友人から譲り受けた立派なテーブルが据えられているのですが、レジ机として使うにはちょっとだけ背が高いのです。なので、椅子も自然、脚の長いバースツールのようなものになるのですが、テーブルと一緒にいただいた初代のスツールが壊れたのはかれこれ5年は前の話。で、それからどうしてきたかというと、背の低い別のスツールの上に古雑誌を束ねたものを置いて凌いできたのです。もちろん最初はとりあえずのつもりだったのですが、いつしかそれが常態に。持病の腰痛にも良いはずはないのですが、それなりのものはそれなりのお値段がするし、それなりの値段を出すからには4人の同意が必要。でも、4人で買物には行けない。なら「まあいいか」という、うちの店に特有の思考回路をたどり、ずっと先送りにされてきたのです。どうやら「イケア」がすべてを解決してくれそう、となったのが半年ほど前。それなりのものでも安い。ネットで画像も確認できる。今度ついでがある人が買ってこよう、とこうなった訳です。

「イケア」は想像通り、ぼくの苦手な場所でした。まず目指す商品のある場所へたどり着くのが一苦労。で、購入するものを決めたら、こんどは在庫のある倉庫(のような場所)へ行くことになるのですが、その際まったく用事のない売場をぐるぐる回らされます。この徒労感はすさまじい。より安く買うために「ファミリークラブ」の会員にもなりましたが、正直もう行きたくないです。おかげでスツールは買えたし、2990円は確かに安いですが、ちょっとした敗北感をおぼえるのもまた確かなので。でもまあともかく、今日の予定はこれで終わり。学生時代の友人が南船橋に住んでいるので、うまく会えたら一杯やろうと思っていたのですが、連絡はつかず、そのまま店に戻りました。


 延び延びとなった祝杯を、田端新町の中華料理屋「遊光房」であげたのは22時過ぎ。以前お客さんに教えていただいたもののずっと行けずにいたお店ですが、安くておいしく感じの良い、素晴らしいところでした。甕出しの紹興酒400円、白葱のあしらわれた水餃子370円、自家製叉焼入りの山盛りのもやし炒め300円。最後の「四分割秋水伝」にさしかかった『明治バベルの塔』を読みながら、楽しく実りの多かった今日一日をひとり反芻したのでした。明日からまた頑張って働きます。

(宮地)

*1:きっかけについてはこちらを。

*2:森まゆみさんは沢渡温泉の旅館の部屋でこの本を見つけて、徹夜しちゃったそうです。

*3:振り返ってみるに、千葉駅前に降り立ったのはこれがはじめて。柏、市川、船橋津田沼あたりはもちろん、館山、安房鴨川や成東でだって降りたことあるのに。東京で暮らしはじめて20年以上、まったく用事がなかったんだなあ、と思うとちょっと感慨深いですね。