これが篠原勝之、なのかあ


 一箱古本市までに品出しするぞ!と心に誓っている段ボール箱が、そうですね、まあ20箱ばかりはあるのですが、昨日もそのなかのひとつを開けて片っ端から値付けしていたら、これが出てきました。

 おお、黒岩涙香

『明治バベルの塔』を読んだばかりなので、これまでになく身近に感じます。山田風太郎は「涙香も鬼才ではあるが、やはり秋水、兆民、内村鑑三などとは違うね。半分は正義感で半分は俗情だ。」と評していて*1、まあそうなのでしょうけど、でも幸徳秋水よりはこの人の方が、まだ親近感はあるような。いずれにしてもぼくらなんかとはまったくスケールの違う怪人なのですが。

 で、この本『死美人』。涙香の他の作品と同様、外国のものの翻案だそうです。読んだことはありません。もし今回読まなければこれからも機会はなさそうだけど、さてどうしましょうか。でも読む読まないは別にしても、この旺文社文庫版、手元には置いておきたい装幀です。ずいぶんカッコいいカバーがかかっていて、どこのどなたのお仕事かしらとみてみると、なんと篠原勝之。そうか、これが篠原勝之かあ。

 ぼくらの世代だと、その作品より先に顔に馴染みができてしまっていて、よく知っている人のような気でいるのだけど、本当はあまり知らないんですよね。ミカコに「でも、状況劇場のポスターとかこんなんじゃなかった?」と言われて、ああ確かにそうだったかも、と思い出す程度。後追いの知識というのは、ちょっとかじったくらいでは身につかないという、良い例です。きっと、もうこういう絵は描かれないんでしょうね。ちょっと残念な気もしますけど、宇野亜喜良みたいに内田康夫の表紙をジャンジャン描かれるよりは、と思いましょう。


 お値段はこちらを。状態は正直今ひとつですが、あまり見かけない本なのでそれなりに付けました。文庫新入荷棚で面出しされてます。

(宮地)

*1:山田風太郎明治小説全集』第6巻所収「自著を語る」(対談構成:森まゆみ)より。